双極II型障害と生きる いつも上を見上げて 

うつ→双極II型障害と闘いながら社会人やってます。時々ズッコケますが何とかやってます。この病気を一人でも多くの人に知ってもらいたいです。

【再投稿】OD(オーバードーズ:過量服薬)、自傷行為 その心理と防止法について

この記事は書こうかどうしようか1週間近く迷いました。しかしくすりのことを詳しく書いた以上、ひとりでも多くの人をこの行為から遠ざけるために書かないのは無責任だと思い書くことにしました。

11/7 修正:もう少し現実をしっかりと説明したほうがいいと思い修正をかけました。上手く表現できるかどうかわかりませんが、つたない文章力を絞って書いてみます。

12/5 追記:なおこれはODにかかわらず、全ての自傷行為に通じることです。自傷行為に及ぶ患者の心理を追記しました。オーバードーズ自傷行為と読み替えてください。

2017年 3/11:加筆:東日本大震災の日に、いのちの大切さを考えるということで、加筆しました

 

まえがき

オーバードーズ(OD:Over Dose)は「過量服薬」とも呼ばれ、医師から指示された用量を無視して故意に用量以上に薬を服用することを指します。

うつ状態のときに湧き上がってくる「生きるのがつらい。」「自分が消えてしまいたい。」という気持ちから開放されたくてが行われることが多いようです。

たくさんの量の薬を一気に飲むオーバードーズは身体へのダメージも大きく、決してやってはいけないことです。しかし耐えられないほどのつらさに襲われた時、「もう楽になりたい」「全てを忘れたい」という一心からつい実行してしまう人は残念ながら後を絶ちません。

オーバードーズは計画的に行われることは稀で、ほとんどの方が精神的に不安定になってしまった時に、衝動的に実行してしまいます。しかし冷静になった後、オーバードーズをしたことを必ず後悔をします。周りに迷惑をかけてしまったことや先生の指示通りに薬を服用する、という主治医との信頼関係から出来上がっているルールを守れなかったことなどから、更に自分に自信をなくしてしまうこともあるんです。

そのため、オーバードーズをしたい衝動に駆られても、なんとかそれを抑えることはとても重要なことです。

今日はオーバードーズについて、それを行う人の心理とそれを防ぐための工夫について考えてみます。

漢方、西洋医学を問わず、薬というのは身体に何らかの変化を与える物質です。「毒をもって毒を制す」という考えに基づいています。(現に殆どの向精神薬が「劇薬」指定されています。)その作用が狙った範囲内であれば病気を治すといった良い結果をもたらしますが、規定用量以上に使えば身体にとって害となってしまう可能性もあります。そのため、薬には必ず、適正な用法や用量が設定されています。

オーバードーズを行う患者を見ると、だいたい数十錠の薬を一気に飲む方が多いとか。100錠以上という方がいないわけではありませんが、かなり稀らしいです。

何故かと言うと100錠ともなると一気には飲めないため、服薬するのはかなりの時間がかかりますし、100錠服薬している最中に冷静さを取り戻したり、あるいはその前に意識がボーッとして服薬できなくなるため、多くは数十錠の服薬にとどまります。

繰り返しになりますがオーバードーズは絶対にしてはいけない行為です。 にも関わらずオーバードーズが行われるのは何故か?

オーバードーズをしてしまう背景は人によってそれぞれですが、うつや双極性障害で圧倒的に多いのは、

「現実を忘れたい」

「楽になりたい」

「苦しみから逃れたい」

といったものです。

精神的に不安定で冷静ではいられない時に、このような気持ちに押しつぶされてしまうと、オーバードーズという行為に走ってしまうのです。特に以外なことでしが、うつ状態が重篤なときよりも少し回復した時に起こしやすくなります。なぜなら重篤なうつ状態のときはその気力も起きないからです。

主治医の話で聞いたのですが、オーバードーズは「死にたい」という自殺の目的よりも「とにかく現実から逃げたい」「ここから消えてしまいたい」といった逃避の気持ちから行われることが多いそうです。

そのため、オーバードーズに使われる薬は睡眠薬であったり、安定剤(抗不安薬)であったりと、意識をボーッとさせるものが用いられやすい傾向にあります。

では、オーバードーズしたら死ねるのか?

答えは「限りなくNoに近いYes」です。理由は以下に書きます。

現在処方される睡眠薬抗不安薬ベンゾジアゼピン系の睡眠薬がほとんどですが、ぼくが服用したなかで最強の睡眠薬といわれるロヒプノール4mgを例に取ると、体重81kgのぼくが死に至るために必要な量は

1万5000錠

です。

また、双極性障害の治療に使われ、治療域と中毒域の血中濃度が近いため定期的血液検査が義務付けられているリーマス(リチウム塩)でも

2500錠

です。(注:リーマスを毎日大量に続けて飲んでいると血中リチウム濃度が上がって重篤な障害を起こすことがあります。)

製薬会社に勤務している人か卸し業者でもない限りこんなにたくさんのロヒプノールリーマスを所持している人はまずいませんし、持っていたとしても飲みきる前に眠ってしまいます。あるいは大抵の人はその前に自分のやっていることの愚かしさに気がついてやめてしまいます。(これはいいことですが。)

しかしたとえ何十錠、といった数でも、ほおっておいていいわけではありません。中毒量は致死量よりはるかに少ないので、そのため払う代償はとても大きなものがあります。

まず病院に救急搬送されます。そして胃を洗浄するために鼻からチューブを突っ込まれ、そこから大量の水と活性炭(薬を吸着させるため。)を流し込まれます。

また、血液中に流れ込んだ薬を取り除くため、生理食塩水と利尿剤の点滴をこれでもか、というぐらい行われます。

そして当然おしっこがガンガン出ますが、本人は意識がないかもうろうとしている場合が多いので、おしっこを外に出すためカテーテルを突っ込まれます。(どこから突っ込まれるかはご想像してください。一番突っ込まれたくない場所からとだけ言っておきます。)

そしてバイタルチェックをおこないつつ、拘束衣をつけられ、寝返り等もできないようにされます。

その後しばらく入院となりますが、もちろん閉鎖病棟で厳重な監視つきとなります。

身体的な苦痛だけではありません。

先程も書きましたが、冷静になった後、必ず後悔をします。周りに迷惑をかけてしまったこと、先生の指示通りに薬を飲めなかったことなどから、更に自分に自信をなくしてしまう結果になるからです。

また、オーバードースは主治医にとっても大きなショックです。

患者の治療のために処方した薬が自傷行為の材料とされるわけですから、

「患者の自傷行為は主治医に大きな敗北感をあたえる。」

のです。

オーバードーズで亡くなるケース

先程オーバードーズで死ねるのか?という問いに対して、「限りなくNoに近いYes」と書きました。しかしオーバードーズで亡くなる患者は大勢います。

何故か?それはオーバードーズすると精神が酩酊状態になるので、屋上から身を投げたり階段から落ちたり、またその状態で車を運転して崖から転落したり、ひいては自分の家族や他人を巻き込む事故を起こしたりする可能性が高くなるからです。(危険ドラッグの事故の例を思い出してください。)

また、患者の体調がかなり悪化している場合や他の薬物(アルコール含む)を乱用している場合は致死量以下でも亡くなることがあるそうです。

なぜオーバードーズするのか?その心理

オーバードーズに限らず、自傷行為をする人の心には

「死ぬほど辛い」という気持ちがあります。

そしてその気持の中には、

「この苦痛から逃れたい」という思いがあります。(ぼくも経験しました。本当に孤独でつらいです。)

この苦痛から逃れられれば本当は生きていたいんです。しかし死ぬほど辛くて、その苦痛から逃れたい。それがオーバードーズリストカットという自傷行為の手段を選んでしまい、致命的かつ悲惨な結果をもたらしてしまうのです。

皮肉なことに、ODやリスカで患者は「自分は生きている。」という実感を得ることすらあります。しかしそれは患者を含め周りが本当に願っていることとは違います。患者と周りの人たちの願いは「この苦痛を和らげて生きていく。」ということなんです。その本来の目的から考えたら、自傷行為は本人にとっても周りにとっても不本意な結末となってしまうと思いませんか?

 

オーバードーズ自傷行為を防ぐ基本的な考え方

患者さん自らもオーバードーズ自傷行為を防ぐために知っておいて欲しいことが2つあります。

オーバードーズ自傷行為の衝動は長く続かない

「楽になりたい」

「薬をたくさん飲んで全てを忘れたい」

「この苦痛から逃れるために死んでしまいたい。」

このような思いに駆られてオーバードーズ自傷行為は実行されてしまいますが、実はこの強い衝動というのは長く続きません。

ほとんどの場合、非常に強い衝動が持続するのは数十分程度であり、そこを乗り越えれば致死念慮は消えてはいないものの、なんとか理性でコントロールできるレベルにまで自分を取り戻します。

つまりこの数十分を何とか乗り越えることは非常に重要になってきます。ここさえ乗り越えれば、オーバードーズ自傷行為を実行に移す危険性は大幅に減るからです。

オーバードーズしたい」という衝動に駆られても、「10分だけ我慢してみよう」とわずかな時間でも我慢してみることは非常に意味があることです。また、周囲の人たちに少しでもいいから話をするなどして時間を引き延ばす方法は、実はとても有効なのです。 

小さな手間でオーバードーズは防げる

誰ひとりとして好き好んでオーバードーズ自傷行為をする人はいません。

オーバードーズは辛い気持ちに押しつぶされて、「死ぬ以外にここから逃れる方法がない。一番手っ取り早いのがオーバードースだ。」という気持ちから衝動的に行われます。積極的にオーバードーズをしたいわけではなく、他に方法が思い付かないため止むを得ず選択される方法なのです。

つまりこれらは積極的に行われる行為ではないため、ちょっとした障害、面倒くささがあれば、それだけでもオーバードーズを思いとどまる材料になります。

オーバードーズを防ぐための工夫を後述しますが、そんな大変な方法ではなく、ちょっとした手間を加えるだけです。しかしそれが精神的にギリギリのところで闘っている方にとっては大きな抑止力になるのです。

ちなみにこれは自殺を予防するための考え方と同じになります。

電車の駅のホームなどで、線路への転落を予防するための対策としてホームドアが設けられている駅が最近増えています。

「ホームドアなんて作っても本気で自殺する人は乗り越えることができる。」と思うかもしれませんが、実はそうではないんです。「もう死にたい」「でも本当は死にたくない」というギリギリの精神状態で闘っている患者の心理にとってはホームドアを乗り越える、というちょっとした障害が大きな抑止力となるのです。たったそれだけのことですが、これが「自殺を止める言い訳」を自分の中で作りだし、自殺を思いとどまらせる、我に帰る、という効果があるのです。

また、ホームドアが設置されていなくてもホームの線路の向こう側に全身が映る鏡が設置されていることもあります。

こんな鏡がなんの役に立つのか?それはまさに今死のうと思っている自分の姿を見ることによって、冷静さを取り戻すことにつながるのです。

オーバードーズ自傷行為の防止も基本的な考え方はこれと同じです。

ちょっとした手間を設けるだけでも、オーバードーズ自傷行為心理的に抑止する大きな力となってくれるのです。このちょっとした手間を「そんなことをしても意味はない。」と軽く考えないことが重要です。 

オーバードーズ自傷行為を防ぐ工夫

患者のほとんどは、お薬を医師から処方してもらう時には「オーバードーズしよう」といった意図を持っているわけではありません。病気の治療として受け取ったお薬ですが、治療中に耐えられないほどにつらい事があった時、「もう死にたい」「楽になってしまいたい」という気持ちに負けてしまい、気が付いたらオーバードーズしてしまうのです。

オーバードーズはできる限り予防しなくてはいけません。

なぜならば、オーバードーズによって得られるメリットなど何もないからです。患者さんの「楽になりたい」という気持ちすらもオーバードーズで叶うことはありません。

オーバードーズを防ぐために出来る予防法について紹介します。 

  • 薬物(特にアルコール)を摂取しない。

アルコールや他の薬物(覚せい剤、麻薬、等)は処方された薬の効き目を増強したり、副作用を起こしたりしてオーバードーズによる死の危険性を増加させます。

  • 家族に薬を管理してもらう

薬を手元に置かないことは、基本的ながらも非常に有効な防止策になります。

精神的に不安定になった時、手元にお薬があれば勢いでオーバードーズしてしまいやすくなります。

しかし家族の方が薬を管理してくれれば、必要以上に飲むことができなくなるため、オーバードーズのリスクが大きく低下します。

またご家族が薬を本人に渡すときに精神状態のチェックも行えるため、患者さんの精神状態が不安定ではないかどうかを把握しやすくなります。

常にご家族が薬を管理するというのは大変なので、特に精神状態の悪い期間だけ家族に薬を管理してもらうようにするという方法でも有用です。ぼくはオーバードーズしたことはありませんが、家内が薬を管理してくれています。(ぼくの場合は「飲み忘れる」という別の問題があるためです。)

  • 粉薬にしてもらう

オーバードーズに用いられる薬はほぼ錠剤かカプセルです。

粉薬をオーバードーズしたというケースはほとんどないそうです。

その理由は明白で錠剤なら一気に何十個も飲みやすい(場合によっては水なしでも服用可能)ですが、粉薬は何十回分も一気に飲むことはまず難しいですよね。

また、粉薬は服薬に当たってある程度の水が必要になるため、これも1つ手間になります。

ということはこれを逆手にとってみると粉薬にすればオーバードーズを予防しやすくなることが分かります。

オーバードーズしてしまいそうな精神状態が続く時は、処方薬を粉砕してもらうと、オーバードーズのリスクは低下するそうです。

ただし中には粉薬にすることができないタイプの薬もありますので、主治医とよく相談してみてください。

  • 受診間隔を短くする

週一回の受診にすれば、手元には最大でも1週間分の薬しかないことになります。

持っている薬が少量だと、オーバードーズするリスクが少なくなりますし、また万が一オーバードーズしてもその被害も少なくなります。

また受診間隔を短くすれば、より短いスパンで主治医に相談できるようになるため、これも安心感につながります。

  • 等身大の自分の姿が映る鏡を置く

オーバードーズ自傷行為欲求に耐えられなくなったら鏡で自分の姿を見てください。そこにはまさに生きているあなたが映っています。そして10数えながら自分の姿を見つめるだけで気持ちが冷静になってきます。

  • 我慢せず周囲に助けを求める

それでもどうしてもつらい時は周りに、

「つらい」

「助けて」

「話を聞いて欲しい」

と助けを求めましょう。

「そんなこと言ったら迷惑だと思われる」なんて思わないでください。

周囲の人からすれば、何の知らせもなく、ある日突然オーバードーズされてしまう方が悲しく感じてしまいます。身近な大切な人が突然オーバードーズしたら「なんで私に相談してくれなかったの・・・」「そんなつらいなら言ってくれれば・・・」と思うでしょう。

つらいときは「つらい」「助けてほしい」と言いましょう。それがあなたのためでもあり、何も言わないよりも正直な気持ちを伝えた方が周囲だって安心します。周りにだれもいないときは主治医や他の心療内科、精神科のお医者さんでも構いません。大抵のところはちゃんと話を聞いてくれます。

最後に、念を押しますが、オーバードーズしても肉体的、精神的苦痛が増すだけです。ストレスに押しつぶされそうになったらまず誰かに助けを求めてください。

繰り返しになりますが、「この苦痛を和らげて生きていきたい。」という本来の気持ちから考えたら、オーバードーズは本人にとっても周りにとっても不本意な結末となってしまうと思いませんか?

 

うまく書けたかどうかわかりませんが、今までの記事の中で一番苦労しました。オーバードーズではありませんが、実はぼくも自傷行為の経験者です。サバイバーとして、一人でもオーバードーズ自傷行為をする人が減ることを願ってやみません。