双極性障害2型と生きる いつも上を見上げて 

うつ→双極性障害2型と闘いながら社会人やってます。時々ズッコケますが何とかやってます。この病気を一人でも多くの人に知ってもらいたいです。

精神科医に失望しました。でも「精神科医の実態」を知りませんでした。

今日は精神科医と患者について、ちょっと辛口の記事を書こうと思う。

はじめに

精神科医中嶋聡先生がかなり物議をかもしだす著書を出している。

うつ病体験」という本だが、ぼくはその内容を詳しくは知らない。読む気にもならなかったから。

しかしその中でも炎上しているのは以下の部分らしい。

この本の中で、引用すると

最近、診察していてとくに強く感じることがあります。それは「会社に行くのがしんどくなった。上司に話したら『それなら病院に行って診断書をもらってこい』と言われた。休めるように診断書を書いてほしい」といった患者がとみに多くなっていることです。(中略)
 聞いてみると、「職場でストレスがある」と言います。医師から見ると、それは仕事をする以上はあたりまえのもので、それほどのストレスとも感じられない場合が多い。しかし本人は、その影響として抑うつ(落ち込んだ気持ち)や不安、イライラなどを強く訴え、「このような状態では仕事ができそうもない。休みたいので診断書を書いてほしい」と希望します。(26~27ページより)

うつ病患者とストレス

こんなことよく書いたものだ、とその勇気には感服するが、うつと躁を繰り返し両方の気持ちが理解できるぼくとしては、

「100kgのベンチプレスをできる人が40kgのベンチプレスをできないのはおかしい。」と言っているようなものだと思う。100kg持ち上げられる人だって最初から出来たわけじゃない。地道な鍛錬の結果そうなったものである。だから40kgしか上げられない人を責めることはできない。ぼくは真剣にそう思っている。

しかしながら、職場では大半の人はある程度のストレスに耐えているのも事実である。また、「ファッションメンヘラ」なる実に耳障りが悪い言葉を生み出した原因となった、まるで流行りのように精神疾患を捉えるほんの少し(これまた定義のはっきりしない言葉で申し訳ないのだが)、の患者、例えば上司から仕事のミスを叱責された、等の理由で会社を休職したい、と申し出てくる(ずっと以前から外来していたのではなく)「初診」の患者も結構いるらしい。

耐えられるストレスの度合いは人によって異なるとは言え、たまに上司に叱責された程度で会社を休職していては本人にとってもこの先、人生を構築していく上でかなりしんどいものがある。仮に(語弊があるが「その程度」)で休職せざるをえない場合、社会復帰には相当なリハビリが必要だし、おそらくこれは中島氏ならずとも常識的に考えればわかるだろう。

DSM-5の功罪

なぜこのようになってしまったのかは2013年にアメリカ精神医学会でまとめられたDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)の功罪が大きいと思う。

DSM-5はできるだけ精神疾患の判断基準を統一しようとするいかにもアメリカ的発想のもとでつくられたものだ。つまり医師の経験の違いによって生じる疾患名を統一するため、「これこれが何回起きたらうつ」といった感じのものなのだ。

これによって若手の医師でも精神疾患の判断が簡単にできるようになった。しかし病気というのは生身の人間に起こるものだ。病態はそんな簡単に区切れるわけがなくもっと連続したものだ。特に精神疾患は数値化の難しいところが大部分を占めるため、ほとんど意味をなさないと思う。

ぼくの主治医はDSM-5は参考書(あるいはそれ以下)程度としか扱っていない。全く無駄とは言わないがアメリカ精神医学会も多大なる時間と費用の浪費をしたものだ。

精神科医にすべてを丸投げすることの愚かしさ

精神科医の勤務状況

よく、「精神科医が信じらなくなった。」という意見を患者さんから耳にすることが多いが、ここで視点を変えて精神科医の一週間をざっと書いてみたいと思う。

彼は精神科がある総合病院に努めている精神科医だ。(ちなみに開業医もそんなに違わないとか・・・。)

  • 外来で一日患者を見るのは週二回。また隔週でさらに半日ずつが二回。
  • その合間をぬって入院患者の回診。
  • またさらにその合間を縫って他科(神経科、内科、外科、泌尿器科など)のリエゾン回診(他科のドクターへの相談に乗るために患者を回診すること。)
  • さらに深夜の救急対応。意外と知られていないのだが、深夜の救急対応で精神科関係のものは1位から2位のかなりの上位を占めている。自傷行為による緊急搬送がほとんどだ。だいたいODが多いので緊急透析などの緊急入院が必要となる。その場合たとえ搬送されたのが夜8時過ぎであっても病院から帰宅するのは朝の3~4時ぐらいになる。そして次の日はまた朝9時からの日勤だ。
  • また、平日の昼間であっても結構な頻度で警察からの精神鑑定依頼がくる。その場合は向こうに出向かなければならない。保護されたお年寄りや、逮捕された容疑者に明らかに専門家の意見が必要な場合は結構あるらしい。
  • そして週1~2回の夜勤。
  • 一日あたりに診断する患者の人数は少なくても約80人。多いときは100人を超える。
  • 残業はひと月あたり170〜200時間程。

精神科医も人間

これを聞いた時、何という激務だ、と思った。先日某総合病院で産婦人科の研修医が過剰労働でうつになり不幸にも自殺してしまった。意外と知られていないが医師という職業は極めて「ブラックな職業」である。規制が必要とされているがなかなかできない。その背景には特殊性(人の命を預かるということ)と専門性から、誰にでも代わりが務まるわけではないからだ。

実際、これだけの激務の中であなたを診察している主治医に対して、「あなたを信じられなくなった。」と軽々しく言えるだろうか?

そんな彼らがもしひとりひとりの精神疾患患者と同じ目線で、同じ世界に埋没しながら診察したらどうなるだろうか?おそらく患者よりも先に医師がまいってしまうだろう。

 彼は言う。「ぼくたち精神科医は必ず患者の世界に没入しないように必ず一線を引いて患者を見ている。冷たい言い方かもしれないけど、患者を『治療が有効かどうか?のひとつの生命体』としてしか見ないこともある。でないと患者が持つ『暗黒面』に引き込まれる恐れがあるから。」

まとめ

 ぼくたち患者(特に外来)にとっては主治医一人に対し週1~2回、15~20分程度の診察かもしれない。しかし医師にしてみればそれを日に100人こなさなければならない。しかもひとりひとりに対していい加減な診察はできない。だからこそ患者と距離を置いて診察しなければならないのだ。

もちろん医師である以上、患者の気持ちに沿った診察はしなければならないとぼくは思う。だがそれが患者の主治医に対する「過剰なまでの」依存心を100%満たすとなると主治医に対して「神になれ。」と言っているのに等しい。あなたが神になれないのと同様、精神科医も神にはなることはできないのだ。

しかしそんな中でほとんどの医師は精一杯努力している。それを忘れるべきではない。

中嶋氏の著書も、そんな「医師の立場」から書いたものかもしれない。まあ、それを自分の中だけで留めておかず世に送り出した本意は分からないが・・・。

 

(おわり)