双極性障害2型と生きる いつも上を見上げて 

うつ→双極性障害2型と闘いながら社会人やってます。時々ズッコケますが何とかやってます。この病気を一人でも多くの人に知ってもらいたいです。

ある精神科医との会話

まえがき

先日の記事で現場の精神科医のおかれている状況について知ってもらいたい思い、患者の視点ではなく医師の視点から(もちろんぼくは医者ではない。)書いてみた。もちろんすべての医師があのような環境で働いているわけではないが(なぜならぼくは過去に亡き母が統合失調症のようなものを発症した際、いろいろな病院を回ったが中には「こんな金にもならん患者は迷惑だ。」と言ったろくでもない医師と会って大喧嘩したことがある。)、大半の医師はなんとか患者を救いたいと思って仕事をしていると思う。

ある精神科医のつぶやき

実は前回の記事はぼくの古い友人から一月ほど前に聞いた話だ。彼とはぼくは双極性障害Ⅱ型を発症する前からの付き合いで、知り合ってしばらくしてからぼくのことを双極性障害Ⅱ型の可能性がある、と思っていたという。しかし当時(今でもそうだが)彼とぼくとは患者と主治医の関係ではなかったのと、良き友人関係を続けたいという思いから敢えて言わなかったのだそうだ。それに双極性障害Ⅱ型は社会生活が送れないほどひどいものではないし。

ある時彼とぼくは夕食をともにした。そのときに言った言葉は今も覚えている。

「マイク、聖路加国際病院の日野原先生が言っていたけど、医者の仕事がもし『人間を死から救う。』というものであるとしたら、歴史上のすべての医者はみんな敗北者なんだよ。」

さらに、

「特に精神科は事故や病気、老衰で亡くなる人は殆どいない。最も多い死因は自殺だ。その中で最も多いのはOD(Overdose:過量服薬)だ。これほど俺たち精神科医にとってつらいものはない。だってなんとか患者の症状を少しでも緩和してあげたい、と思って処方した薬を自死の道具に使われるわけだからね。これほど無念なことはない。」

ぼくは聞いた。「ぼくも実はODしたことがある。あの時は特に計画的に行ったわけじゃなく、『とにかくこの苦痛から逃れたい。』という思いからだったんだ。まあベンゾジアゼピン系の薬は昔のバルビツール系みたいに強力じゃないから今でも生きながらえてるけど。」

すると彼は言った。「ベンゾジアゼピンだから大丈夫、だという考えは大きな間違いだ。実際に今でもODで亡くなる患者は後を絶たない。衝動的になる気持ちはわかるが、さっきも言ったように主治医がその薬をどのような思いで処方しているかを考えてほしいな。

さらに言った。「自分の患者が自死で亡くなる、というのは何回経験しても本当に惨めだ・・・。」

治療とは医師と患者のチームワーク

その後、精神科の治療について話題が移った。

「精神科の患者の中には、ときに主治医をまるで仇のように不信感を抱いている患者がいる。しかし精神科領域の治療は主治医と患者の共同作業だ。それはリハビリをしながら社会復帰を目指す外科患者に似ている。患者にしてみればリハビリは非常な苦痛を伴う。主治医は鬼のように思えるかもしれない。しかしそこで主治医が助け舟を出したらどうなるだろう。患者は一生社会復帰出来ないままだ。それと同じで精神科でも主治医と患者との間に「ときに厳しいことも言える信頼関係」が作られないと治療はうまくいかないんだよ。

ぼくは聞いた。「それは例えば?」

彼は答えた。「人がつらいと思うストレスの量は比べることはできないが、ときには『この人はメンタルが一般人に比べて極端に弱いな。』と思う人がいる。そんな人には薬物療法だけでなく、デイケアのような社会復帰プログラムを必要だ。もちろんデイケアに通う人がみなメンタルが極端に弱いわけじゃないけどね。それを説明すると中には『そんなしんどいことはできない。』と拒否する人がいる。つまり悪い意味で「自分は必ず良くなるんだ。」と自律的に思わず、他人任せ的な感じかな。

更に彼は付け加えるように言った。「よく、『馬を水飲み場に連れていることは出来ても水を飲むかどうかは馬が決めることだ。』というだろ?あれさ。最終的に良くなるかどうかを決めるのは患者自身なんだ。」

最も医師を困らせる患者

ぼくは聞いた。「確か前にも聞いたことがあるけど『主治医を困らせる患者』というのは・・・。」

「うん。それはやっぱり『言うことを聞かない患者』ではなく『嘘をつく患者』だ。処方した薬を処方どおりに飲まなかったのに飲んだ、とか。こっちは処方どおりに飲んでいると思っているわけだからその後の治療方針がトンチンカンな方向に行ってしまう。まだ『この薬は具合が悪くなったのでやめました。』と言ってくれる方が遥かにいい。マイクもわかると思うけど、精神科の薬は人によって向き、不向きがある。だから飲まなかった、飲めなかった、いずれにせよ正直に言ってほしい。」

彼はさらに苦笑いしながら言った。「困ったことにそういう患者ほど治療がうまくいかないのを主治医のせいにするんだけどね。」

さらに「まあこの歳になると患者が嘘をついてもある程度は診察室に入ってきた時点でわかるけどね(笑)。」

 

その後の帰り道、「自分の患者が自死で亡くなる、というのは何回経験しても本当に惨めだ・・・。」という彼の言葉がぼくの頭から離れなかった。

 

(おわり)