双極II型障害と生きる いつも上を見上げて 

うつ→双極II型障害と闘いながら社会人やってます。時々ズッコケますが何とかやってます。この病気を一人でも多くの人に知ってもらいたいです。

株を守っていてもうさぎは飛んでこない ー 主体性ー 

はじめに

ぼくは双極性障害Ⅱ型になってから、仕事のアウトプットの質が格段に落ちた。それはこの障害の特質でもある、

「億劫感」

「不安感」

のために、仕事に対して前向きに取り組むことができなくなってしまったためだ。

この症状は不眠や希死念慮とともに、うつや双極性障害の最も大きな影響を与えるものである。仕事だけでなく「生存」という生命にとって最も大切な本能に大きな影響を与えるものだけにしっかりと治療する必要がある。

このシリーズの記事は主に双極性障害の方々がいかに健常者に近いパフォーマンスを出すか?ということについてのぼくなりの経験から得たヒントを書いたものだが、あくまでもこれらの症状がある程度寛解していることを前提として書いている。もしそうでない場合はその治療を最優先してほしい。

薬物療法の果たす役割

ぼくは前回の休職から復帰して以来、なんとか勤務できているが、それは現在のところ気分の波が比較的落ち着いているからだ。

これはいうまでもなく現在処方されている薬によるものだ。つまり人工的に作り出されたものだが、それでも通常の生活ができるのであれば構わないとぼくは思っている。

しかし薬剤が安定していなかった復帰したての頃はざんざんな状態だった。

与えられた仕事をこなす(いや、正確にはこなせなかった。)のにも時間がかかり、なおかつそのアウトプットは散々なもので、何回も上司から怒られ、それが

「所詮マイクはメンヘラだから仕方がないね。」

と言われる始末だった。悔しくて涙が出た。

主体的な姿勢とは?

そのうちぼくに合った薬の処方が見つかり、気分の波が小さなものに収まってきた。そのうち仕事のアウトプットも上がってくるだろう。そう思っていたが、なかなかそうはならなかった。

「なぜ?」

ぼくは自分の仕事のスタイルについてもう一度考え直さなければならない、と思った。

メンターとの夕食

ぼくがかつて20年間勤めた会社にものすごく仕事ができる人がいた。ぼくは未だに彼以上に仕事ができる人に出会ったことがない。今でも交流がありメンターと仰いでいる人だ。まあ大抵は今でも怒られてばかりだけど(^o^)

彼は仕事が早いだけでなく、的確にポイントをついた結果を出していた。たとえ上司から出された仕事の依頼が曖昧なものであっても、彼の手にかかると実に具体化されたものとして仕上がってくるのだ。

さらにすごいのは彼はその結果にプラスアルファを追加提案していた。しかもその殆どは上司だけでなく同業他社をもうならせるほどのものだった。

わかりやすく言うと、上司から100の期待値の仕事を与えられると、200以上の結果を出して来る人だった。

ぼくは彼に連絡をとり、高田馬場で夕食をともにした。

株を守っていてもうさぎは飛んでこない

久しぶりの再会と世間話に花が咲いた後、ぼくの話を一通り聞いてくれた彼(仮にSさんと呼んでおこう。)は、開口一番、こう言った。

「マイク、お前のことだから『株を守る』って言葉知ってるよな?」

「はい。知ってます。」

これは中国のことわざだが、参考までに意味を上げておこう。

宋の国の人で、田んぼを耕している者がいた。
ある日、畑の中にあった切り株にウサギが走ってぶつかり、首を折って死んでしまった。
彼はこれを町で売ると、高値で売れた。そしてその人は持っていたすきを捨てて(自分が今までやっていた農作業を辞めて)、毎日切り株をじっと眺めて、また切り株にウサギが飛び込み、楽をしてウサギが手に入らないかと願っていた。
当然のことながら彼はウサギを得ることはできずに、彼は宋の国の笑い者となった。

Sさんは言った。「今のお前がやっていることはこれと同じなんだよ。」

ぼくは意外なことを言われてびっくりした。内心不愉快だった。ぼくは楽をして仕事をしようと思ったことは一度もなかったからだ。

「Sさん、それは違うと思いますよ。ぼくはSさんほどじゃないけど積極的に仕事しているつもりです。」

するとSさんはこう言った。「じゃあお前、聞くけど仕事命じられたときにその仕事がなぜ必要なのか?何に必要なのか?確認してるか?」

ぼくは返事に詰まった。ぼくが仕事を頼まれたときに上司に答える言葉は「わかりました。」だけだったからだ。

目的の確認

仕事には必ず目的がある。しかし上司は部下に仕事を頼む時、それを説明してくれるとは限らない。これはどんな小さな仕事でもそうだ。例えば、上司から

「会議室の予約お願いしてくれる?」

と言われたとしよう。

普通なら、「分かりました。」

で済ますこともできる。これで十分だろう。

しかしSさんが言ったように、この会議が「なぜ必要なのか?何のために必要なのか?」を確認しておけば、つまりこの場合

「なんのための会議ですか?参加者は何人ですか?」

と確認しておけば

「参加者は何人だからこれぐらいの規模の会議室がいるな。あと参加者の顔ぶれから密室のほうがいいかもしれないな。あとプロジェクターも準備しなきゃ。」

というプラスアルファの結果が出せる。

つまり受け身ではなく、こちらから仕事に対して主体性を示すことで百点満点の問題に対し200点の回答が出せる、ということだ。

Sさんはこう言った。

「マイク、仕事は常に"What's the next?"(「次はなんだ?」)を考えろ。それが主体的に仕事をすることだよ。」

蒸鶏を口に運びながらSさんは昔と変わらない人懐っこい笑顔でこう言った。

不安との戦い

あと、もうひとつぼくはSさんに聞いたことが、「仕事をしていて失敗したらどうしよう。」という不安にかられるということと、職場のみんなの目が気になる、ということだった。

現にぼくは職場で「いい年して失敗ばかりしているできの悪いやつ」と思われてると思っていた。

それに対してSさんは言った。

「俺だって失敗ばっかりだよ。打率でいうと半分もない。4割だ。けどなマイク。失敗するやつっていうのはそれだけ頑張ってるやつなんだよ。アインシュタインの言葉でも、『失敗しないやつはなにもしない人間だ。』っていう言葉がある。失敗をしてもそこから得るものがあればそれがいつか自分の糧となるんだ。だからどんどん行動しろ。周りの目なんて所詮評論家なんだから気にしなくてもいい。お前は昔からそういうやつじゃないか。だから俺はお前をDVDフォーラムの仕事に名指しで引き抜いたんだ。」

 さらにSさんは言った。「不安は2つに別れる。自分で頑張ればなんとかなるものとそうでないものだ。例えば明日雨が降るかどうかについて雨が降っても大丈夫なように折り畳み傘をもっていくことは出来るけど、雨を降らせないようにすることはできない。だから出来ることだけに集中するんだよ。それしか人間には出来ないじゃないか。」

主体的な仕事を長く続けるために

ぼくは帰り道、Sさんの言葉を思い出していた。

「マイク、人間だれでも若い時と同じようには働けなくなる。だから身体には気をつけろ。自分では若いと思っていても結構身体は正直だ。これは自分で管理するしかないからなあ。決して無理せず、焦らずやれ。お前結構猪突猛進型だから。ゆっくりでもこつこつ地道に続けているやつが最後には勝つんだ。」

休息は必ず取る

それ以来、ぼくは会社でスケジュールを組む際に、会議などのどうしようもない場合を除き、必ず一時間に10分は休息を入れることにしている。

天気がいい時は会社の外に出て空気を吸うことにしている。そのほうが精神衛生上もいいし、双極性障害を抱える人間としてはとても大切なことだ。

くどいようだが、今書いているシリーズはあくまでも双極性障害と付き合いながら仕事をする方法であって、また調子を悪くして休職するためのものではない。

 

(おわり)